超高齢化社会をまもなく迎える我が国において、国民全員を公的医療保険で保障する制度の安定化、持続可能性を確保することは大きな課題です。
 今では、私たちが病院に入院するのと同時に退院後の生活の場所、あるいは転院先を想定して、治療や看護、支援が同時にスタートします。事故や急病などのように救急対応や手術が必要な場合は急性期の病床で集中的に治療を受け、その後、回復期、慢性期へと状態が落ち着くにつれ、状態に応じて医療・介護サービスを受ける場所を選択するというシステムに移行しています。このことは、患者や家族にとっては、退院後も心配しなくて済むという利点がありますが、同じ医療機関で医師や看護師、メディカルソーシャルワーカーと顔をあわせて治療をしながらゆっくりと退院後の生活を準備するという状況とは異なり、必要な治療やケアの程度、種類により、短期間で医師や看護師など対応者や環境が変わるということの不安もあります。
また、人工呼吸器やカテーテル、胃瘻造設、気管切開チューブの使用など医療機器の使用場面も医療機関への入院中だけではなく、介護施設や自宅でも使用することが日常化し、事故も発生しています。医療・介護従事者にとっても目の前の患者や生活者が日々、状況が変わることによる注意の程度も変わってきているということです。
 このようなことから、患者の病状に関する情報だけではなく、使用している医療機器に関する情報も含めて、これまで以上に切れ目なく、情報を引き継ぐ必要があります。
 たとえば、医療機関でMRI検査を受ける場合、MRI検査の特性上、金属の持ち込みは禁止です。金属を用いた気管切開チューブを使用している在宅管理中の患者が医療機関でMRI検査を受ける場合には、金属を使用していない部品に付け替える必要があります。しかし、金属が使用されていることは外からは確認し難く、適切な検査結果が得られないことがあります。MRI検査を実施する医療機関は、当該患者に気管切開チューブを装着した医療機関から情報を得たり、検査担当者が事前にチューブ類の添付文書を確認したり、金属探知機を用いて確認するなどの対応が必要になります。
 また、胃ろう栄養用チューブは、定期的に交換する必要がありますが、その材質によって劣化の状況が異なったり、仕様によっては、抜去が難しいことがあります。材質や仕様に合った注意をしながら交換しないと断裂し、胃内にチューブが残ったりすることがあります。
 このことは、消費者にとっても情報をしっかり得ておく必要があるということです。特に、自分が使用している医療機器がどのようなものであるかということだけではなく、他にどのような医療機器があるのかといった全体を知って、自分が使用しているものの特徴を知ることも求められます。もちろん、患者が専門的なことを知ること、しかも高齢者が知って覚えていることができるかというと難しいのが現状でしょう。
 必要な時に、必要な人がどのように情報を得るべきか。それを知るための情報の提供方法、取得方法も情報の質として重要になってきたということです。
 このことは、地域包括ケアシステムに限ったことではありません。我が国でのオリンピック、パラリンピックの開催を控え、海外からも多くの人が日本を訪れます。体の具合が悪くなったら日本の医療機関を利用することもあるでしょう。そうなれば、海外で使用されている医療機器の特徴や傾向、患者の状態と医療機器の選択方法なども知っておく必要も出てくるでしょう。
 超高齢化社会を世界に先んじて経験している日本だからこそ、医療現場で起こり得る事故の予兆をしっかりととらえ、適切な対応ができるようになる機会にもなれば良いと思います。