食品について、消費者が“安全”と判断するよりどころとして、“(出荷前の)製品検査をしていること”があります。味やにおいの異常、虫などが入っていたことを聞くと、「ちゃんと検査してから売ってほしい」との声が聞かれます。
 昨今では、高齢化、健康志向の高まりにより、健康診断、人間ドック、ピロリ菌検査、昨今では、脳ドックも登場し、消費者自身が「検査」を受ける頻度や種類も増えています。
 さて、この検査は、何のために実施するのでしょうか。もちろん、食品工場や精密機械工場など製造工程での検査は、出荷する前に規格外の製品を見つけて、出荷しないようにするという目的の検査もありますが、それだけではありません。
検査によって、現状を把握することができます。合格基準や設計した規格に対して適合しない製品がどのくらい発生しているのかを知って、今後の製造現場での管理をどのくらい厳しくするか、緩くするか、設計の段階でどの程度検討の精度を高める必要があるのか、など、川上での活動の改善につなげることも検査の目的、役割です。
 健康診断の結果、血圧が高いので、「あなたは不健康です」ということが目的ではなく、原因を調べて、食事に注意をしたり、運動をしたりなど、血圧が上がるに至った原因や治療の必要性の程度、生活の改善などその人にあった健康状態を保つための方法を導き出すものです。また、検査は目的にあった方法でなければ、その結果から必要な情報を得ることはできません。
 先日、ある精神科の先生から認知症の検査についてお伺いする機会がありました。先生は「いっしょにやってみましょう。両手をこんな風にできますか?」と、指を使った遊びからお話が始まります。子供の頃にやった親指と中指、薬指を合わせて狐の顔を作ってみるというものです。これが、その先生が認知症の程度を確認なさる方法の一つとのことです。素人には、この方法で認知症の程度を知ることは難しいですが、プロにはわかるようです。患者さん本人だけでなく、付き添ってこられたご家族と一緒にすると、家族間のコミュニケーションの情報収集もできるとのことです。認知症のスクリーニングというと、チェックシートを使って、年月日の認識はどうか、3つの単語を復唱できるか、それを2分後に再生できるかという検査が思い浮かびます。でも、その検査を受けた人にとっては、答えられなかった、まちがえてしまったということが気になり、気持ちが塞いでしまうこともあるそうです。
 検査はそれ自体が目的ではなく、将来に向かってよい状態を実現するためのものだとの認識を持つことが大事です。