人や物を運ぶ自動車は、私たちの暮らしになくてはならない交通手段のひとつです。自動車を所有するユーザーは、新車購入時に所定のリサイクル料金を支払います。現在、使用済自動車のリサイクルによる預託金制度があるのは、世界の中で日本とオランダのみです。

自動車ユーザーが支払ったリサイクル料金は、シュレッダーダストやエアバッグ類、フロン類の適正なリサイクルに使われます。わが国のリサイクル実効率は99%まで向上しています。埼玉や愛知など複数の自動車リサイクル事業者の現場を見学する機会があり、日本の優れたリサイクル技術に大きな信頼を得ました。

自動車リサイクル法は負の遺産から生まれました。自動車由来のシュレッダーダストをはじめとする産業廃棄物の不法投棄が、1990年代に香川県豊島(てしま)で発生しました。当時、埋立処分場の逼迫や処理費の高騰により、処理業者が費用を支払って使用済自動車を引き取る逆有償化の現象が横行しました。その結果、費用負担を嫌った業者等によるクルマの不法投棄や不適正処理が続出しました。

リサイクル部品にはリユース部品(中古部品)とリビルト部品(再生部品)があります。点検・美化、交換・修理・再組立・品質確認等を行い、リサイクル部品として活用することにより資源化率を高め、廃棄物削減による環境負荷低減および経済性向上に取り組んでいます。

自動車や家電製品など物を製造する動脈産業と、使用後に適正処理する静脈産業の連結・協力は不可欠です。重点項目を的確に捉え、メンテナンスによる機器の長寿命化や作業工程の効率化による消耗品部材の長寿命化が望まれます。また、生産効率を極限まで高める生産活動の導入や、高い水準の品質の提供、優れた人材の確保、事業の効率化、資金力の維持増強が重要となります。環境負荷の増大や汚染を未然に防ぐべく、途上国へのリサイクル技術や資金援助の推進も必要です。

プラグインハイブリッドをはじめ電気自動車、燃料電池車など、次世代車の材料変革がはじまっています。自動車への太陽光パネルの搭載が進めば、その分別や廃棄が課題になります。リサイクル技術のさらなる向上が急がれます。AIや自動ロボットが作業を担う時代が目前に来ています。生産者責任のもと、設計段階から解体性を重視し、破壊不要なフロンにシフトする、再生プラスチック使用の自動車を購入するとリサイクル料金が0円になるなど、新しい仕組みの登場が待たれます。

私たち消費者はバスやタクシーなども含め、自動車を使用するユーザーとして、クルマを大切に乗り続けた後の行方に関心を持ち、環境負荷低減に向けた取組を応援していきたいものです。