日時:2017年9月30日(土)13時30分~16時30分
場所:全国婦人会館2F 会議室

 

本部・広報委員会では昨年に引続き、賛助会員である(公財)日本適合性認定協会、ならびに(一財)日本GAP協会との共催により、GAPセミナーを開催しました。GAP が「持続可能性」に配慮して行われる 2020 年東京オリンピック・パラリンピックの食材調達基準に採用されたこともあり、当日はNACS会員を中心に25名が参加しました。
以下、セミナーの後半に行われたトークセッションの模様を、お伝えいたします。
なお、各講師の講演および、トークセッション冒頭の戸部委員長のショートプレゼンの内容は、添付のファイルにてご確認いただけます。

 

【プログラム】
■「GAPセミナー開催の意義」 公益財団法人日本適合性認定協会 広報マネジャー   江川 泰氏
■「良い農業のやり方「GAP」について」 一般財団法人日本GAP協会 事務局長        荻野 宏氏
■「JGAP認証農場 認証の取得のメリットと課題」 (株)ローソン 農業推進部 マーチャンダイザー 北野 慶一郎氏
■トークセッション「消費者の視点から見たGAP」
パネリスト   江川 泰氏、荻野 宏氏、北野 慶一郎氏、戸部 依子(NACS食生活特別委員会委員長)
モデレーター  釘宮 悦子(NACS広報委員会委員長)
■質疑応答

 

【講演資料】

GAPセミナー開催の意義

良い農業のやり方「GAP」について20170930

JGAP認証農場認証の取得のメリットと課題20170930

GAPはわたしたちに何をコミットしてくれるのですか20170930

 

北野さんプレゼン

 

トークセッション 「消費者の視点から見たGAP」

釘宮 ただいま戸部さんから、GAPに対する期待や疑問を提示していただきました。消費者は、食品や農作物の安全に対し関心を持っている訳ですが、実は、安全性を判断する物差しを持っていない。これまで表示からしか安全性についての情報を得ることが出来ませんでした。戸部さんはプレゼンで「システム」という言葉を使っていましたが、GAPはプロセスを管理する、食品・環境・労働の安全を含めたシステムで管理する考え方と言えます。このような新しい商品選択尺度を提供するものについて、どのように考えていくかということになるかと思います。
先ほど戸部さんから、生産段階においてどのようなリスクがあるのかが、なかなか消費者にはわかりにくいという指摘がありました。この点に関して日本GAP協会の荻野さん、いかがでしょうか。生産段階においてはどのようなリスクがあり、GAPではそれをどのように管理しようとされているのでしょうか。
荻野 生産段階のリスクは、残留農薬の問題、病原性の細菌・ウィルスの問題、そして異物混入、大きくはこの3つです。それらを収穫したものに付けないようにする。また農場では収穫したものを箱詰めしたり選別したりしますが、その時に作業をする人自身も清潔にしておく必要がある。それら基準書に書いてある管理点を工程として押さえていくことが、GAPの考え方になります。
釘宮 北野さん、流通業の立場では、どのようにリスク管理をされているでしょうか。
北野 収穫された農産物はトラックで輸送されます。一時保管して加工して店舗に並ぶという流れになりますが、一番気を使っているのが温度管理です。病原性の微生物等々の増殖を促す温度帯というものがあるので、最適な温度で店舗やベンダーの工場に運んでいくことに取り組んでいます。さらに今は、商品自体の微生物の量を軽減するということも考えています。先ほどお話したローソンファームで取り組んでいる6次化というのも、この辺のリスク軽減を考えて行っていることです。なるべく輸送時間が短くて鮮度のいいものを、すぐ産地でカットして加工する。カット野菜工場とか一次加工しているところでは菌数検査とか、もちろん消毒もしているし、温度管理も徹底してやっています。このように出来るだけ早く運んで、出来るだけ産地の近くで加工するということをまず念頭にしてリスクを軽減に努めています。
今までの流通では、生産者が農産物を地域の農協や市場に持ち込んで、それを仲卸さんが買って、それらを我々が買ってと、何回もトラックで荷下ろししながら運ばれていくんですが、我々は出来るだけ産地から直接ベンダーの工場に納品するスキームを作るなどして、リスク軽減に努力しています。
荻野 今の北野さんのお話を聞いてなるほどと思ったのですが、これまで市場を通さなければ中間コストがかからないなど、流通の効率化の観点で語られることが多かったわけですが、安全の観点から考えられていることでもあるのだとわかりました。もちろん市場には市場の重要な機能もあるので、一概に良い悪いを言うつもりはありません。
釘宮 戸部さんのプレゼンにもありましたように、カット野菜など加工品ではあるが農産物と同じようなかたちのものが増えてきています。一方で水菜など、加熱せずに食べられる食材も増えてきました。店頭にカット野菜もあれば水菜も並べられている、このような状況のなかで、消費者の選択基準はこれまでと同じでいいのかという問題提起ですが、GAPの観点から荻野さんいかがでしょう。
荻野 加熱せずに食べられる食材が増えてきたということですが、農業はまさにフードチェーンの起点です。そこでの原料としての農産物の安全性をどう確保していくかという観点が、今とくに求められているのだと思います。その意味でもGAP自体ますます重要になってきていると考えます。具体的に生食される野菜に対してどれだけのことが出来るかというと、農業現場だけでは限界があります。生産現場でできることはGAPのなかでやるわけですが、例えば加熱して菌数を減らすようなことまではGAPでは出来ません。またカット野菜のように洗わずに調理されるものは、フードチェーンのなかで生産者は出来るだけのことをやって、工場に入ったところではまたきちんと洗浄殺菌する、それを前提に生産者が努力していくことはいろいろあると認識しています。
釘宮 ローソンさんはいかがでしょうか。生産の現場で加熱用のもの、生食用のものを区別されているのでしょうか。カット野菜もローソンさんで沢山扱っていらっしゃると思いますが。
北野 生産に関しては加熱用も生食用もGAP上は同じ管理ですが、出荷形態で大きく分かれてきます。大根ひとつとっても、加工用で使うものはトンパックという300キロくらい入るものに入れて、泥付きの状態で出荷します。洗ってからだと傷みが早いんですね。青果物に関してはすべて洗って出荷となりますが、加工用はそのような形態で出荷しています。
またGAPでは、青果を洗う水について大変厳しい基準が設けられていますので、その水質検査もしています。カット野菜で使うものは、食品工場に入った時点でそちらの方で菌数検査はもちろん、カットしたものを洗って電解水を使った消毒をしています。消毒をして、一回冷やしこんでしっかりと商品の温度を下げた状態でパック詰めしていくという形です。生食用と加熱用で違いがあるというわけではないですが、最終的に生食用にはより注意を払った取組をしています。
荻野 北野さんからたいへん重要なお話がありました。今日お配りしているJGAPの基準書に管理点の16というのがあります。16.1に「生産工程で使用する水の安全性」という項目があって、「生産工程で使用する水の種類と水源及び貯水場所を把握している」というのが16.1.1です。さらに16.1.2に「農産物取扱工程で使用する水の安全性」の項目があり、農産物を最後に洗う水、収穫後に霧吹きに使う水などは直接口に入る可能性が高いので別の管理点にしているわけですが、水質検査を行って大腸菌不検出を確認する、主に生食するものには飲用にできると認めた水と明記し、安全性を確保しています。
釘宮 GAPの管理点のなかで、水の安全性についても明記されているのですね。ところで江川さん、日本適合性認定協会はGAPのこの制度を認定する立場にあります。消費者の安全に対する期待が高いなか、この期待にどういうふうに応えていこうとされているのでしょう。
江川 包括的な話になってしまいますが、皆さま方がどういう形で製品・サービスを受け取るのがベストなのだろうか考えたとき、安全・安心ということがありますが、適合性評価を通じそれを保証する仕組みを提供している、ということです。
私たち広報では、組織の不祥事に対する苦情処理的なことも行います。ある乳業メーカーが日付を超過した牛乳を使って製品をつくるとか、偽装表示や異物混入、また自動車メーカーのリコールなどですね。そのような不祥事が起きたときによく言われるのが、あそこはISO9001を取っているのにどうしてこんなことをするのか、けしからん、認証を取り消せ、ということです。でも制度の仕組み自体が悪いから不祥事が起きるわけではないんですね。
消費者の安全に対しても、同じことが言えます。認証をとった企業でも不祥事は起きることがあり得ます。それは仕組みが悪いからではない。仕組みはもっている、でも起きた。起きたら審査を通して是正し、原因を究明して予防につなげていく。認証を取り消せということではなくて、是正する仕組みがあるのでそれを使って直していく。その仕組みをもっている組織であることを、消費者の方に評価していただく。そうした仕組みがあることを、社会のなかで信頼の約束にしていきましょう、ということを我々は訴えています。
釘宮 GAPの認証農場というのは、間違いを是正する仕組みをもっている農場なんだ、ということですね。
荻野 今話にでている是正する仕組みですが、基準書の管理点9に「苦情・異常・ルール違反への対応」があります。何かあったときは誰に報告するか、どういう風に原因を追求し是正していくかということが書かれています。そういう仕組みがあるので、何か起こった場合でもすぐに対応し良くしていくことが出来るように、GAPでは押さえられています
戸部 今ちょうど私の知りたいと思っているところを、荻野さんが説明くださいました。消費者は、生鮮食品についてあまりお店に苦情や問い合わせをすることがないですよね。でも今のような仕組みがあるなら、私たち消費者がローソンさんで買った野菜について何か異常を感じたときや知りたいことがあった場合、要望がある場合、その声は生産者まで届くということでしょうか
荻野 そこをGAPでどう押さえているかというと、管理点10「トレーサビリティ」のになります。10.1.2に「出荷記録」、10.1.4に「収穫記録」の項目があります。農場で、いつ誰に出荷してものであるかを記録しておけば、どのロットで起きたものか辿れますので、何か瑕疵があったときにも遡ってチェックをし、直していける仕組みとなっています。
北野 店舗からクレームからくると、速やかに農場まで届く仕組みがあります。実際に、傷んでいるとか形が悪いとか、返品があったりもします。そういうことが農場にフィードバックされるんですが、これまではそれがいつ収穫したのか、どうしたのかはっきり言えないことがありました。そうなると、次から改善されるのかと聞かれても曖昧な返答にならざるを得ませんが、記録があれば「これからは出荷する畑が違います」、「品種が違うから大丈夫です」と、明確に答えることができるので、非常にメリットがあります。よってGAPは、クレームにも対応できるシステムだと思っています。
釘宮 消費者は、GAPのことで知らないことがたくさんあります。もっと沢山の方にGAPを知っていただくにはどうすればよいでしょうか。
北野 われわれもここは模索しているところです。ローソンファームの22社に認証を取らせているわけですが、実際生産者サイドからも、われわれがこれだけ時間もお金もかけて取ったのだから、なんとか消費者にJGAP商品を選んでもらえるようにアピールしてくれと強い要望をいただいています。
例えば週末のセールではJGAPの訴求マークを入れた商品を並べる。そういう形をとって、ローソンに入店した10人のうちひとりでもよいので、JGAPって何?とスマホで調べてもらえたらと考えています。
また我々はお弁当をつくる工場でもPRしています。今後お弁当やおにぎりでも、JGAP認証農場のお米を使っていますと、消費者に訴える方法を考えているところです。
釘宮 荻野さん、ここでアンケートについてご紹介いただけますでしょうか
荻野 私が説明した資料の25ページ以降に、アジアGAP総合研究所が消費者のGAPの認知度調査をした結果がありますので、少しご説明します。
アンケートの1番で、多くの消費者が食品購入時には食の安全性、とくに「国産や産地」をに意識していることがわかりました。次にアンケート2番ですが、GAPについて詳しく知っている人はわずか2%、ある程度知っている人を合わせても9%という結果でした。また3番、GAPの認証農場マークを見たことがあるのは4.7%でした。4番のGAPを知った経緯は、半数近くが「店頭でみた」です。5番ですが、2020年のオリンピック選手村で使用される食材の調達要件がGAPであることを知らない方が8割おられます。
その後アンケートのなかでGAPの説明をし、ある程度GAPを知ってもらったうえで、6・7番で改めてGAPについて聞くと、安心・安全と感じる方が7割、またGAP商品を購入したいという方も6割くらいおられました。次の8番ですが、GAP認証商品を中心に扱う企業姿勢を75%がよい企業と感じていますので、ローソンさんは多くの方が良い企業と感じるということだと思います。
9番では同じ価格であれば認証を受けた商品を選ぶが56%、値段が高くても買うという方も3割くらい。つまりGAPがどういうものかを知っていただければ、商品選択のひとつの手段になり得ることが、この調査で表れていると思います。
釘宮 GAP認証農場マークを付けることについて、何か規定がありますか
荻野 JGAPの認証をとった農場のみが付けられるマークになります。まさに生産者が自分でパッケージングをしたものになります。ですから店頭で半分に切って売られている大根や、丸のまま売られるキャベツなど、段ボールで出荷されて店頭で小分けされるようなものには付けにくい現状です。
なおそのような場合に、小売業者さんや製造業者さんがJGAPのマークを付けたいということであれば、JGAP農産物使用マークというものもありますので、それを取得していただくことになります。
釘宮 江川さん、消費者にGAPを知ってもらうことについてはいかがでしょう。
江川 私たちの組織としては地道にやっていく、ということしかないかと…。
また安全だったら、まずくてもいいのでしょうか。テレビ番組を見ていても、「美味しい」という話題がよく出てきます。別に味が良ければいいと思っておるわけではないですが、消費者の嗜好というものもありますので、そこをどういう風に消化していくんだろうなとか。GAPの仕組みをわかってもらって、そのなかで消費者の方が自分なりに安全と味だとか、安全と新鮮だとかを比較考慮できる基準をもつことが必要かなと思っています。
釘宮 今までの議論では、安全ということにスポットがあたっていましたが、GAPには安全の観点だけでなく、持続可能性といった観点もあります。その点も含めて、最後におひとりずつ言い足りなかったことなどお話いただけますでしょうか。
戸部 今日いろいろお話を聴いて、GAP認証取得の価値が少しずつわかってきました。
私たちのように首都圏に住んでいると、生産者との距離が遠い。収穫してすぐ出荷といっても、私たちの手に届くまでにはある程度時間がかかるわけです。江川さんが安全なら美味しくなくてもいいのかとお話しされましたが、フードチェーンが長くなっても美味しい食材がつくれる仕組みであって欲しいと期待します。
我々が農家さんと直接買い物できるかというと難しい。そこをローソンさんなど流通の方が間に入り選択してくださっていると思うので、流通の方の調達の視点が私たち消費者の視点と合っていることが重要になります。そういう話合いをするきっかけとしてGAPの制度というものを見ていく、ということが必要なのではと思います。
また改善する仕組みがあるということですので、私たち消費者にとっては非常に心強いところです。苦情だけでなく、美味しかったという声も生産者に届けられれば、GAPにより生産者と消費者との距離がもっと近くなれる、そんなことを考えておりました。
北野 当社ではローソンファームを中心にGAPは当たり前というなか、これからは味だとか付加価値をどんどんつけていこう、次のステップに進んでいこうと頑張っています。
今おでんのシーズンですが、おでんの大根は100%ローソンファームの製造品です。ほぼローソンファーム鳥取で作っていて、1年中ローソンファームのものを使っています。ローソンファームで安心なものを作り、それをすぐそば、車で1分2分のところで加工し鮮度のよいものを作るようにしています。こうした商品をどんどん増やしていきたいと思っています。取り急ぎ、今日の帰りには是非ローソンに寄って、おでんを味わっていただければと思います。
荻野 オリンピックで持続可能性がテーマになっていて、その観点からGAPが調達基準として選ばれたことをご紹介しました。消費者にとって最も大事なのは安全性だと思いますが、GAPには安全性だけでなく、環境の保全とか生産者自身の安全性、あとは人権や労務管理などいろいろな要素があります。それらを総合的にやっていくことで農業においても持続可能性を確保していこう、サステナビリティを確保していこうとしています。先ほどマークの話がでましたが、消費者から見えない部分もGAPはやっているよと、マークを付けることで見える化する、それを感じていただく、そういうふうになっていけばよいと思っております。
江川 皆さんのお話を聴いていて、共通しているのは可視化ということでしょうか。情報の公開とか、そのための可視化の仕組みだなと。JGAPも可視化の仕組みなんですよね。消費者と生産者がどれだけクローズになれるか、その手段としてJGAPなどの可視化される仕組みを使って、その距離を縮めていくことが大事なのだと思います。
SDGsでは17の目標ありますが、目標を見ただけではわかりませんよね。169のコンパスによって目標が可視化されている。要は可視化だと思うし、評価する基準の多様化に自分たちがどのように対応していくのかということだと思います。私も消費者として自分のなかにいろいろな評価する物差しを持ちたいし、JGAPも物差しのひとつにしたい。生産者の方がガイドラインに対しどれだけ取り組んでいるかということを評価できるのは、いいことだと思っております。
釘宮 皆さま、ありがとうございました。これでトークセッションを終了します。

 

HPトークセッション写真