わが家のキッチン!HACCP対応!! (第9話)
いつもとにおいが違う・・・味がおかしい・・・異物が入っている・・・など、買った商品に異常を感じたときの話です。
なにかおかしい・・・と思ったら、現状維持を!
食べる前に、食材や食品の色やにおいがおかしいなと思ったら、保管していた場所は適切だったか、開封してからどのくらいだったか、買った時期を思い起こしてみましょう。腐っていなくても、高温に置かれていると、においが変わってしまうことがあります。また、外観上、腐っていそうになくても、実は、肉眼では確認できないほどのカビや細菌が繁殖しているかもしれません。
状況を確認したら、商品や包装材を捨てずに、買ったお店か表示されているメーカーか販売者に連絡をしましょう。その際に、いつごろ買ったか、開封してからどのくらい経ったかなどの情報があると、異常の程度や異常があった場合の原因究明の助けになります。
おかしいと思いつつ、食べてしまったり、廃棄してからお店等に申し出ても、後から状況を確認したり、原因を調べたりすることができなくなります。
食品工場では、販売店や消費者から異常の連絡があった時、工場内で異常が見つかった時など、起こりうるケースを想定して、健康被害やリスクを最小限にするためのルールを決めています。
特に大事なのは、異常の連絡をすみやかに関係部署や会社の意思決定をする部署や責任者に伝えるかということ、保健所などの行政機関との連絡をとることです。そして、異常の拡大や健康危害の発生可能性があると判断した場合には、すみやかに消費者に情報が伝わるようにします。
“ロット番号”は重要!
1件の異常の連絡や発見から、異常の範囲の拡大を予測し、早期に適切な対応をすることが重要です。異常の内容が詳細にわかるとその判断の適切さの程度も上がります。異常の範囲の拡大の予測のために重要な情報の1つとして、“ロット番号”または、食品の種類によっては、“消費(賞味)期限”や“製造年月日”があります。ロット番号が同じあるいは近いものは、同時期に製造されたということなので、異常が複数見つかった場合は、何か問題がある可能性が高いからです。
ですから、私たち消費者がおかしいなと感じたときに、その商品のロット番号を確認し、食品メーカーに伝えることは、異常の発生の予測や原因究明に向けて大事な手がかりになると言えます。
食品では、製造年月日だけでなく、時間まで記載する場合もあります。“年月日、時間”までが1つのロットと言えます。
回収をすることは大事だが、再発防止に向けた取組も大事
テレビや新聞、インターネットのニュースで回収の記事を見かけることがあります。健康被害の発生や拡大防止のために重要なお知らせなので、注意をしておく必要があります。
同時に、異常発生の原因究明や再発防止に向けて適切な対応がとられていることを確認することも重要です。
食品工場では、回収の手順が適切に守られたか、計画通りにすすんだかを確認すると同時に、異常発生の原因究明を行い、再発防止に向けて、これまでの業務の方法やルールの見直しをします。
キッチンも「備えあれば憂いなし」
炊飯器でごはんを炊いているときに停電になったらどうしますか?
筆者もこれまで経験したこともありませんし、考えたこともありませんでしたが、可能性はゼロではありません。土鍋に移し替えて、続きの「炊き」をするのかなぁ~。
通常の状態が保てなくなることも考えておき、できるだけ影響を小さくしておく必要がありますね。小さいお子さんがいらっしゃるおうちでは、急に子どもが泣き出したり、具合が悪くなったりして、調理を中断せざるを得なくなることもあるでしょう。
そんなときは、つくりかけの食材や料理は、冷蔵庫に入れるとか、とりあえず、火をとおしておくと良いでしょう。
改めて、言わなくても、私たちはそこそこ日常的な対応は既にできているのかもしれません。
食品工場では、停電になったり、機械が故障したりして、作業途中で製造が止まることも想定して、あらかじめ対応を決めておきます。
特に、食中毒の原因になる微生物の増殖は温度による影響が大きいので、通常の状態ではなくなったときに、それらがどのようになるのかを的確に予測し、対応を決めることが重要です。
また、調理施設・設備の管理のところで書いたように、故障による中断がおこらないように、あらかじめ不具合の予兆を発見できるチェックを日常的に実施することも重要です。
災害時の避難訓練と同じように、キッチンや製造の現場でも不測の事態にそなえて、対応をきめておくと、あわてずに済むのではないでしょうか。
キッチンで“検査”・・したことあります?
普段、キッチンではpHを測定することはありませんが、食材や料理の品質や火の通り具合などを確認します。目で見たり、においをかいだり、触ってみて弾力を見たり、味をみたり・・・揚げ物などは、揚がり具合を菜箸からの泡の出具合や音で確認することもあります。
いわば、これらが、キッチンにおける“検査”と言えるでしょう。
おいしい食材や料理を見分けられるように、五感がよく働くように、健康管理が大事です。また、いろいろな食材や料理を食べて、経験をつむことも必要かもしれません。
食品工場でも、五感で確認する検査があります“官能検査”と呼ばれるものです。工場では、検査を担当する人が1人ではないことが多いです。検査を担当する人によって結果が変わっては困るので、担当する人すべてが同じように、小さな変化でも察知し、適切に検査ができるように訓練したり、定期的に確認したりします。
もちろん、検査機器で確認、測定する検査もあります。検査機器が適切に作動しなかったり、検査に使用する試薬が適切でなかったりすると正しい検査結果が得られません。また、検査機器で測定する場合も、検査をする試料(食品を一定濃度に溶かしたり、砕いたりします)を準備したり、ルールを作るのは人です。
検査に使用する機器の点検はもちろん、検査に携わる人のトレーニングもします。
聞き酒は楽しそうだけど、検査となると・・・難しいのでしょうね。
次回からいよいよ、HACCPの中身に迫ります。
ハサップ、ハセップ、ハシップ、エイチ・エー・シー・シー・ピィ~。HACCPをどう読むか、決めましたか?