消費生活に関するわが国最大の専門家団体 公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 NACS(ナックス)

わが家のキッチン!HACCP対応!! (第10話)

わが家のキッチン!HACCP対応!! (第10話)

第1~9話は、キッチンの環境や食材の保管、調理に使用する設備や器具、そして、人の健康や衛生管理についてみてきました。
これらは、一般的衛生管理プログラムと言われるもので、HACCPシステムの前提となるものです。
HACCPシステムとは、それぞれの食品(1品ごとの料理)について、その食品の衛生管理をする上で最も重要な管理ポイントを決めて、そこに集中して管理するという方法です。
しかし、集中して管理する以外のところが疎かになっては、そもそも重要な管理ポイントの管理ができません。
汚れたキッチンで、汚れたお皿に衛生面に気を使ってさばかれたお刺身を載せて食べても安全には食べることができそうにありません。
重要な管理ポイントには特に注意をはらって管理できるように、それ以外の部分は、日常的に普段から当然のこととして衛生管理ができるようにしておくこと、それが一般的衛生管理プログラムの目的です。
HACCPシステムは、どこか旅行に出かけて人気の観光スポットを訪れるのに似ています。
「人気の観光スポット」が最も重要な管理ポイントというイメージです。
その観光スポットが間欠泉のようなところであれば、なおのこと、ある限られた時間に行かなければ見ることができません。
見ることができる時間にその場所に行って、できれば一番良く見える立ち位置に到着するためには、1年のうちのどの時期に行って、どのホテルに泊まって、何時に出発したらよいのか、誰と一緒に行くのが楽しいか、どんな服装でいけば、安全に楽しく見ることができるのか・・・というように、準備をしっかり固めることが、一般的衛生管理プログラムのようなイメージです。
もっとも注意して取り扱わなければいけない調理(製造工程)の段階はどこか。そこを適切に管理するために、他の工程をどう管理するのか。
特に、私たちの日常の調理や食品工場での作業は、毎日続きます。一方、衛生状態に対する注意は季節が変わったり、食材が変わったり、食べる人が変わったりするとそれにあわせて対応を変える必要があります。このような変化への対応も含めて、特に意識しなくても、つまり、“普段通り”が“適切な行動”であり、“適切な現場の状態”でなければ、食生活の安全性は守り続けられないということです。
食品工場に限らず、職場の管理として、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の頭文字から5S(ごえす)と言われるものが基本になっています。そして、食品衛生を目的とする場合には、食中毒微生物の存在に着目して、「洗浄」「殺菌」を足して、7S(ななえす)の管理をします。これらを実現するために具体的な管理の対象と方法を決めて、その実施状況を確認して、管理の方法が適切かどうかも含めて、常に見直し、改善していく活動が、一般的衛生管理プログラムとも言えます。

 

 

やっと、登場? HACCPの意味!

今夜はカレーライス。カレーといっても、今では、本格派カレー、種類豊富なカレーがありますが、子どもから大人まで多くの人が食べた経験がある・・・そう、給食で食べたようなカレーを思い浮かべてください。
カレーを作って食べる上で、安全性の視点で一番気をつけなければならないことは何でしょうか。
いつ、誰が食べるかというのが判断のポイントとなると思います。

 
■小さい子どもやお年寄りがいらっしゃる場合は、具が大きいと喉につまってしまうので、具の大きさや硬さ、口の中でのほぐれやすさ、流動性。
■特に、子どもが食べる場合には、やけどをしない温度で提供するこ     と。
■一人暮らしの人や共働きの家庭では、保存食にするので、保存中に腐らないこと。
■ある食物に対するアレルギーを持っている人が食べる場合はその食物(アレルゲン)が入っていないこと。
■1人で食べはじめた子どもが食べる場合は、食器をおとしたり、壊したりする可能性があるので、入れる食器の材質。

 

そうです。食べる人や生活スタイルによっても、最も気をつけなければならないことは変わります。
確かに、HACCPシステムは、宇宙食の食品衛生上の安全性の確保のとりくみとしてはじまりました。でも、“わが家のキッチンのHACCP”は、それぞれのおうちの状況によって変わって当然です。
このように、その食品(料理)の性質や食べ方、食べる人を明確にし、その食品を作る上で、危害の原因となるものは何かを分析し、そのうち、最も気をつけて管理しなければならない点を明確にし、管理の方法や、問題がないことの確認方法をあらかじめ決めておく手法のことをHACCPシステムと言います。

言葉の意味よりも、HACCPシステムの目的、考え方を理解することが大事です。
とはいえ、言葉の意味を確認した方が、理解はすすみます。
Hazard(危害) Analysis(分析) Critical(重要) Control(管理) Point(点)
を略して、HACCPと呼んでいます。「危害を分析して、重要な管理ポイントを決めて、取り組む」ということです。

 

次回は、HACCPの「H(危害)」に迫ります。

くらしに役立つミニ知識

くらしに役立つミニ知識

PAGETOP
公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会
〒102-0071 東京都千代田区富士見2-4-6 宝5号館2F
Copyright © NACS All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.