02. 火災保険が使えると被災家屋の修理を勧誘された
相談概要
昨日、「近所で工事をしているが、騒音が出るので挨拶に来た」と言って男性が家に来た。男性は、「お宅の雨樋が破損しているが、冬の大雪のせいだと思う。火災保険の請求をして保険金が下りれば、その金額で雨樋の工事は費用が掛からずできることになる」との説明だった。それならばと依頼すると、後から査定の人が来て屋根に上がり写真を撮り、保険の申請を保険会社に連絡した。保険の請求代行は無料との話であり、保険金が下りたらその金額をそのまま全額事業者に渡せば、その金額の範囲で工事をするとのことだった。そのときは納得していたが、後になって考えると保険金を全額事業者に渡すというのも不審だし、インターネットで調べると、このような事業者とのトラブルが起きているようで、心配になった。キャンセルしたいがどうすればいいか。(50代 男性)
アドバイス
- 近年、甚大な自然災害による住宅等の破損が多数発生している状況に伴い、こうした事例が多発しています。「火災保険で修理ができると勧誘され契約したが、保険金申請代理手数料を請求された」、「保険金が少なく修理契約を解約すると、高額な違約金を請求された」、「保険金は事業者へ渡したのに工事をしてくれない」、「ずさんな工事をされた」等というトラブルです。
- 「自己負担なく修理工事ができる」と勧誘を受けても、保険金で修理工事がまかなえるかどうか、そもそも保険金が支払われるかどうかも不明な状況での契約は、控えるべきです。
- 経年劣化の損傷を、自然災害によるものと偽って申請したことが後日判明した場合は、契約が解除されたり、保険金の返還を求められることがあります。また、場合によっては詐欺罪に問われる可能性もあることを、認識しておく必要があります。
- まだ契約書面を受取っていないのであれば、たとえ保険会社から申請書類が送られてきたとしても、送り返さなければ保険の申請はできないので、保険金が下りることはありません。
- しかし、解約については、後からのトラブルを避けるために、事業者に契約解除通知を書面で出しておくことが必要でしょう。
一口メモ
*損害保険とは
損害保険は、火災や自然災害等の偶然の事故により、住宅等に生じた損害に応じて保険金が払われます。経年劣化による住宅の損傷や保険金申請代理手数料は、自然災害等の事故による損害ではないので、保険金の支払いの対象とはなりません。
一口メモ
【参照】「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の考え方(国土交通省)
賃借人の原状回復義務の考え方や負担対象範囲について基準を定めています。
(1)原状回復とは
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。
原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化
(2)「通常の使用」とは
「通常の使用」の一般的定義は困難であるため、具体的な事例を次のように区分して、賃貸人と賃借人の負担の考え方を明確にしました。
出所:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の考え方(国土交通省)
なお、襖紙や障子紙、畳表といったものは、消耗品としての性格が強く、減価償却資産の考え方を取り入れることにはなじまないことから、経過年数を考慮せず、張替え等の費用について毀損等を発生させた賃借人の負担とするのが妥当であると考えられます。