■ NACSカーボンニュートラル連続講座B 「『住まい』で究極の省エネと脱炭素を実現するには?」を開催しました |
■ NACSカーボンニュートラル連続講座B 日 時 :2021年7月13日(火)19:00〜21:00 開催形式:オンライン・ライブ配信(ZOOM使用) 講 師:早稲田大学創造理工学部建築学科 日本建築学会会長 田辺 新一 教授 テーマ :「住まい」で究極の省エネと脱炭素を実現するには? 参加者 :58名 |
実施報告: 連続講座第3回は2021年7月13日(火)に開催、58名が参加・視聴されました。環境委員会から報告いたします。 第3弾となる今回は、早稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科・田辺新一教授を講師にお招きして、 「住まい」に焦点を当てたお話をいただきました。 冒頭、欧米でのカーボンニュートラルの動向は、産業革命と同様、単なる環境対策ではなく産業・社会構造の変革、 「再エネ革命」なのでは、との指摘がありました。昨今、「EUタクソノミー」という言葉が注目されています。 投資対象とすべきか否かの分類がなされ、化石燃料に依存した技術や産業は投資対象から除外されていく。 こうした動きが強まる一方、大きく発展していく技術・産業も現れるのでは、と田辺教授は指摘します。 田辺教授は、我が国がカーボンニュートラルを実現するための考え方を「省エネ×原単位改善=低炭素化」 と分かりやすく示されました。オイルショック以降、日本が取り組み続けてきた「省エネ」が、 カーボンニュートラル実現にとっても重要であることに変わりありません。 もう1つの「原単位改善」が、再生可能エネルギー等に関わるキーワードです。 電力量当たりの二酸化炭素排出原単位(kg−CO2/kWh)が大きな化石燃料から、 原単位のより小さな再生可能エネルギーへの大幅転換が求められますが、容易ではありません。 「省エネ×原単位改善」の両輪で取り組むことが不可欠です。 さて、各国の住宅のエネルギー消費量を比較すると、日本は省エネ機器の普及や省エネ型ライフスタイルの進展、 間欠暖房(個別空調)の文化といった背景もあり、全室暖房(セントラル空調)が一般的な欧米の5〜6割です。 内訳としては、暖房より給湯や照明・家電の消費量が多いのが特徴です。 他方、個別空調に起因する居室間の急激な温度変化が原因となるヒートショックや、 不十分な断熱に起因する天井面からの放射熱等が原因となる熱中症など、住宅内での健康被害が多発しており、 ヒートショックによる死者数は交通事故の約4倍となっています。 住宅の断熱性向上等のため、建築物に係るトップランナー基準が設定されているほか、 第5次エネルギー基本計画(平成30年7月)では、 「2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上で、 2030年までに新築住宅の平均でZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の実現を目指す。」 との目標が掲げられています。しかし、2019年度の実績は20.5%と、目標達成にはさらなる努力が必要な状況です。 また、国の省エネ基準やZEHというととても先進的なイメージがありますが、欧米の基準に比べると低く、 かつ義務化もされていません。欧米に比べ冷暖房由来のエネルギー消費量は少ないとはいえ全体の2〜3割を占めていること、 ヒートショック等の健康被害が生じていること等からも早急な取組が必要です。 田辺教授も、住宅・建築物の省エネ対策の強化については議論が戸建に偏っているとしつつも、 省エネ基準の適合義務化とその基準の引き上げは急ぐべき、としています。 講座では、2003年住宅とZEHのエネルギー消費量を比較した研究結果が示されました。 高断熱と設備の効率化が進んだZEHでは、冷暖房+換気では29%減、給湯は44%減を実現しましたが、 その他(家電)は82%増、全体の約半分を占める結果となったのです。 家電の普及率向上、大型化、多様化等により、エネルギー消費量に占める割合が増加する傾向が、 ここでも如実に現れたといえます。 田辺教授は、エネルギー供給側が再生可能エネルギーを増やすこと(原単位改善)、 需要側ではZEHだけでなく家電製品も対象としてエネルギー消費量総量を減らすこと(省エネ)が重要であり、 各製品のカーボンニュートラルをライフサイクル全体で考えていく時代が来る、とまとめられました。 今回も、30分に渡って質疑応答が行われ、参加者が数名のグループに分かれて意見交換を行う場も設けられるなど、 双方向コミュニケーションが充実した内容となりました。 次回は「食」をテーマに開催予定です。ご期待ください。 (環境委員会 錫木圭一郎)
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●主催:公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS) ●事務局:NACS環境委員会/東日本支部 |
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