今年度の意見交換は、西日本災害を経験した岡山、地震や台風の直撃を受けた大阪、
南海トラフ地震による甚大な被害が想定される中部地区(静岡や三重)で順次開催した。 なお岡山、三重は日本を代表するコンビナート集積地でもある。 また今年度の参加者の中には、防災情報に従事している自治体職員、地元で活躍している防災士(静岡2名)の参加があり、 現場における意見・提案を得られたことも大きな特徴となっている。 この4か所の意見交換会で得られた主な意見をテーマごとにとりまとめ、重要な要望などを整理した。 |
(1)「石油に関する備え」について 【移動に関して】 平常時・災害時を通して、自家用車のガソリンを日頃から心がける (満タン、一定量以上確保、半分を切ったら給油など)ことの必要性については、意見が一致していた。 関連した意見として、車の購入時、ガソリンを節約できるハイブリッドや電気自動車を選択する」 や「車が使用できないことを想定し、自転車の準備、日頃から車に頼らない生活を心掛ける」 などの視点を変えた意見もみられた。 【熱源に関して】 災害時の熱源や煮炊き用の燃料として、灯油の有効性や必要性を再認識したという意見も各地で上がった。 しかし石油(灯油)の備蓄の必要性は感じるものの、使用期限があり、灯油の品質劣化に対し、 処理の仕方がわからないなどの指摘が多かった。 最近は、石油ストーブや石油ファンヒーターを有していない家庭も多い。 石油だけに頼らず、携帯型コンロ・ボンベ等別手段の熱源を用意しておく必要もあるのでは、という意見もあった。 このほか、暖房用燃料だけでなく、夏場であれば熱中症対策が重要になる。 石油が暑さ対策に貢献する可能性はないのか、と少し見方を変えた意見もみられた。 【SSに関して】 今回の意見交換会で最も多く出たのがSSへの意見であった。 ・過疎地域ではSSの減少で困っている ・国として様々な対策を検討しているが、SS過疎地の増加に歯止めがかからない状況 ・災害時におけるガソリンの供給を円滑にする為、住民拠点SSを全国的に広げて欲しい (現在、8000か所設置予定) ・移動給油所や災害時に利用できるSSの仕組みを作ってもらいたい ・コンビニでも、ガソリンや灯油販売をしてはどうか ・公民館や避難所に、食料品や灯油の備蓄と太陽光発電システムなどの導入を検討 ・灯油やガソリンを自治体でストックするという考え方ではなく、ストックはSSで行い、 灯油やガソリンが供給されるような「しくみ」づくりが必要ではないか。 ・自治体〜SS間で災害時の優先的供給の協定などを結べばよいのでは など、災害時のSS対応の要望や、減少傾向にあるSSへの新しい役割・機能についての意見や要望が相次いだ。 |
こうした意見や課題をふまえ、石油業界、行政等への要望は以下のとおり 【石油業界に期待したいこと】 平常時から、輸送燃料(ガソリン)を確保しておくことの必要性については、全ての開催地で共通認識となっていた。 また、灯油の備蓄の必要性についての認識も高かった。 一方、現在SSに配布されている幟旗の標語「満タンで安心、灯油プラス1缶で安心」だけでは、 ”何のために”が抜けている。 単なる購入促進を呼びかける業界のPR活動にしか消費者には映らない。 表現等工夫が必要ではないかなどの改善提案が複数出された。 今後、一般市民の共通認識として広げるためにも、改善が必要と考える。 また、災害後の給油所にできる車列対策として、住民拠点SS等の情報提供が必要だが、まだまだ不十分。 自助の対応では限界があるため、SSの仕組みや機能の充実と情報提供に期待したい。 |
この意見交換会で出た意見を、「満タン&灯油プラス1缶運動」 を主催している全国石油商業組合連合会の委員会で紹介したところ、他方面からも同様の意見があり、 今年度から幟とポスターには「災害でも安心」というように「災害でも」 が新たに目立つようなデザインになるとの情報が入った。 (2019年5月27日) |
【公助への期待と問題点】 公助でできることに対して、下記のように多岐にわたった指摘や提案が出たが、 公助での対応にも限界があることが浮き彫りになった。 ・行政の防災計画には、食料・衣料はあるが、燃料・熱源が無いのはおかしい ・地域行政には、燃料を担当する部署が無い ・ライフラインには、ガスは含まれるが、ガソリン・灯油は含まれていない ・自治体が貸出し用の石油ストーブや石油ファンヒーターを一定数保管し、 かつそれらの使用に必要な量の石油(灯油)をストックしておくべきでは ・石油ストーブや石油(灯油)のストックは、保管場所や安全管理面の問題もあって自治体にとっては優先順位がやや低い ・学校ではスペースが無いという理由で暖房機器を保有していないという現実もある ・さらに自治会や避難所では、毛布等備蓄やエンジン発電機の保有はしているが、 燃料は20L携行缶1つのみであり、効果に疑問がある |
(2)「石油に関する情報」について 【必要な情報】 災害時には、ライフラインに関する情報がまず必要とされる。 そこで地域の特性に沿った災害情報を共有する仕組み(避難場所・避難所・災害別(水害及び地震)の危険場所の情報提供) が欲しいという意見が、各地の参加者から出た。 石油に関する情報としては、 ・災害前なら「SSリスト」、災害時は「使用可能なSS」リスト(近隣地区のSSの営業の如何、 SSに店員が駐在しているか等) ・高齢者に優しい(セルフでない)SSの情報 ・石油製品で言えば衛生用品がどこへ行けば手に入るのかという情報も重要 ・家庭における石油暖房機器の保有が減少しており、以前より灯油の取扱いになれていない状況下では、 機器や灯油を安全に取り扱う情報の提供も合わせて行うべき などの提案もあった。 【情報提供媒体】 情報提供の要は自治体が流すべきではないか、という意見も多かった。 しかし、多くの自治体が情報提供の方策に苦労・苦心しており、災害に備えて情報収集しても、 情報量が多すぎて消化しきれていないという現場担当者からの声もあった。 また、高齢者はアナログ情報が頼り。デジタル情報では弱者が取り残されないような配慮が必要である。 そこで高齢者と若者との情報格差を考慮して、 紙ベースとSNSなどスマホを利用したものの両方が必要だという意見が多かった。 具体的には、避難所の責任者がWebから情報収集し、避難所に貼り出す、などの提案もあった。 紙ベースの場合は、避難所や公共の場所、例えば公民館・ゴミステーション・マンションの掲示板などに、 河川の氾濫などタイムリーな情報を張り出す。 デジタル情報は、SNSや市町村のホームページを使った情報提供。 しかし同時にフェイクニュースなどを受け取らないような仕組み作りも必要という意見もあった。 ・電子情報だけでなく、紙ベースで回覧・掲示されて欲しい ・避難所の責任者がWebから情報収集し、避難所に貼り出す ・石油に関する備蓄情報をツイッターやインスタなどで流す |