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和牛預託商法・安愚楽牧場の破綻

和牛預託商法・安愚楽牧場の破綻

2011年(平成23年)8月、和牛預託商法の㈱安愚楽牧場の経営破綻が明らかになった。会社の破綻理由は昨年宮崎県で起こった牛の口蹄疫と今年の東日本大震災による福島原発被害の影響と説明されたが、実際にはこのようなビジネスモデルは成り立たず、いずれ破綻は必至ではなかったか。
和牛預託商法とは和牛のオーナーとして一般消費者に出資を募り、牛の売却益から必要経費を引いて、残りを配当するという仕組みである。バブル崩壊後の低金利政策の中、高配当で多くのオーナーが出資した。
㈱安愚楽牧場でも黒毛和牛委託オーナー制度では、飼養契約期間満了時において牛の再売買が予定されており、牧場がオーナーから再購入する予定の牛の売買代金債務があり、負債が大幅に膨らんだ。
1990年代には和牛預託商法の会社が17社あり出資者を募集していたが、1997年ごろからほとんどの会社が破綻した。最後に残ったのはふるさと牧場安愚楽牧場であった。しかしふるさと牧場も2008年に破綻している。
今回の被害者数は7万人とも言われており、大きな消費者被害になりそうである。8月10日、紀藤正樹弁護士を団長とする全国弁護団(電話03・3261・3026)が結成された。

民事再生手続きの開始申請

8月9日に㈱安愚楽牧場は東京地裁に民事再生手続きの開始を申請し財産保全命令が出された。
民事再生手続き開始を申請した段階では、約619億円の債務と発表されていたが、15日には約4330億円と判明している。

債権の種類別内訳

優先債権:729件、合計債権額9億8300万円(百万円未満切捨て、以下同じ)
金融債権:3件、同52億2500万円
リース債権:15件、同1億1300万円
一般債権:695件、同59億9300万円
オーナー債権:7万3356件、同4207億6700万円
(以下、オーナー債権内訳)
・オーナー:3万5491件、同3196億円)
・オーナー<まきば>:3万5199件、同914億8600万円
・中途解約者:2666件、同96億8100万円
総合計:7万4798件、同4330億8300万円

オーナーの対応について

・ 契約期間満了時には、支払った金額全額の返還請求権がある。
・ 契約では、中途解約は支払った代金から10%の違約金を引いた9割の代金返還請求権がある。中途解約を申出るには、買取を求める意思表示をした方がよい。
・ 解約しない場合は牛の所有権はオーナーにある。
・ クーリング・オフ期間内であれば、急いで通知を出すことがよい。返金の見込はないが、全額返金を求める権利があることを明確にしておく。
・ 「契約更新」を申出ている場合でも、新規の契約としてクーリング・オフの主張ができる場合がある。契約書面 の「飼養委託期間開始日を確認し、クーリング・オフの期間内であれば主張しておく。
・ 中途解約及びクーリング・オフの申し出は日付、住所、氏名、押印、コース名、契約年月日、契約金額、契約番号、及び「私は貴社との和牛売買飼育委託契約をクーリング・オフ(または中途解約) し買取を求める」と付記する。
送付先:〒325-0033
栃木県那須塩原市埼玉2-37 ㈱安愚楽牧場

民事再生手続きとは

会社の経営が成り立たなくなったときに、会社としての存続を目的に行われるもの。2000年4月1日から民事再生法が施行された。
経営陣が留任して財産管理や事業の継続ができる。倒産が予想される段階で裁判所に申立てを行う。債権計画案は債権者の過半数が同意した場合承認される。
申立てと同時に裁判所から会社の財産保全命令が出されるため、債権者の権利行使が制限される。債権者は債権届出期間内に債権届けを出さないと、権利を失うことになる。債権届出期間等今後の情報収集が大切である。
東京地方裁判所における民事再生手続の標準的なスケジュールの流れ
<手 続 申立日からの日数>
再生手続開始の申立て 0日
保全命令・監督命令 0日
再生手続開始決定 2週間
債権届出期限 7週間
債権調査期間 11週間~12週間
再生計画案の提出期限 3ヶ月
債権者集会・再生計画認可決定 5ヶ月

消費者被害を出した主な出資法違反詐欺事件の変遷
年 月 名  称 概  要
1985年6月 豊田商事事件 被害額約2000億円。金のペーパー商法。この後特定商品等の預託等取引契約に関する法律(預託法)が制定された。
1996年6月  KKC(経済革命倶楽部)事件 未常識経済理論を標榜したマルチ。
被害者12000人、被害額350億円
1996年11月 オレンジ共済組合事件  オレンジスーパー定期、1年で6%以上の配当。
被害額93億円
1997年5月 軽井沢ファミリー千紫牧場破綻  和牛を購入し飼育を業者に預託で高配当と元金の返還
和牛預託商法の破綻で消費者被害多発 預託法改正
2001年11月 大和都市管財事件  抵当証券を高配当で販売
2002年1月 八葉グループ事件 マルチ革命と称し5万人から1500億円集め破綻
2006年11月 近未来通信 IP電話の中継局のオーナー募集として出資を募る
被害者3000人、被害額400億円
2007年1月 円天(L&G)事件 擬似通貨「円天」を作り年36%で1000億円集め破綻
2007年1月 リッチランド 架空の投資話で年に倍増と謳い被害者13000人、被害額537億円
2008年9月 ワールドオーシャンファーム事件  フィリピンでの海老養殖に投資すると1年で倍の配当
被害者35000人、被害額850億円
2008年11月 ふるさと牧場(旧ふるさと共済牧場)事件 「和牛のオーナーになれば高配当が得られる」と勧誘し
被害者14000人、387億円の被害。
2011年8月 安愚楽牧場事件 年5~7%の高額な配当を謳いオーナーを募集、
約7万人の被害者、債権額4330億8700万円

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