臨床検査室の認定制度 (第3話)検査と国際規格
タダシさんは、さらに詳しくISO 15189について鈴木さんに質問します。
「臨床検査室がISO 15189に認定されれば、あとは何もしなくていいのかい。」
「そうじゃないんだ。認定取得後も、4年間に2回の審査を受ける必要があるんだ。規格に書かれている内容の中でも重要なのは、採血方法等の作業の改善や心電計の更新などのさまざまな状況変化に応じてルールの見直しを行うなど、日頃から自らの作業を見直し、改善を行なっていくということなんだ。医療の安全に貢献できるよう、これからも改善を続けていかなければ、信頼は保たれないからね。」
「国際規格に基づいていると認定を受ければ、検査結果が他の病院だけでなく、他の国でも通用するという考えかたでいいのかな。」
「そうなんだ。グローバルな現代社会では便利な仕組みだね。認定されている臨床検査室は、インシデント*やアクシデント**が低減し、医薬品の臨床試験における精度が保証されるなどのメリットがある。認定を積極的に活用し、東アジアを中心に海外からの「健診ツーリズム」で、認定された臨床検査室を訪問するツアーなどの企画も登場しているよ。」
「そうか。日本の病院もグローバル化を目指してるんだね。」
「僕たちの努力を理解してもらえたら嬉しいよ。それはさておき、もう一杯飲まないか?」
「いやぁ、これより検査データが悪くなっちゃたまらないよ。今日のところは、これで切り上げよう。」
「わかった。単身赴任はつらいだろうから、時々僕が付き合ってやるよ。また会おう。」
お互いに再会を約束して、その日は帰途につきました。
*インシデントとは、患者の身に直接の影響はなかったが、放置しておいたら事故に至ったと思われるケース。「ヒヤリ・ハット」と表現する場合もある。
**アクシデントとは、患者の身に影響を及ぼすこと(医療事故)が生じることを指す。
⇒次は、「検査のしくみとマネジメントシステム」です。
<臨床検査室の国際規格 ISO 15189 の概要>
製品が国境を超えてやり取りされる現代社会においては、製品の多様化・無秩序化・複雑化による混乱を最小限にとどめるために、製品の品質、性能、安全性、サイズ、試験方法などに関する国際的な取決めが必要です。スイス・ジュネーブに本部を置く国際標準化機構(International Organization for Standardization)が各分野の専門委員会(TC : Technical Committees)を通じて、国際標準であるISOを作成しています。
ISO 15189は、患者診療にとって不可欠な臨床検査室のサービスが、患者とその診療に責任を持つ医療提供者のニーズを満たすことを目的とした国際規格です。この国際規格を用いて第三者が審査、評価して、臨床検査を適切に実施する臨床検査室の能力を証明するしくみがあり、日本ではJAB(公益財団法人 日本適合性認定協会)が認定機関としてこの証明を行っています。
臨床検査室の品質と能力に関する主な要求事項は次の通りです。
管理上の要求事項 | 組織及び管理主体責務 |
品質マネジメントシステム | |
文書管理 | |
サービスの合意事項 | |
委託検査室による検査 | |
外部からのサービス及び供給品 | |
アドバイスサービス | |
苦情処理 | |
不適合の識別及び管理 | |
是正処置 | |
予防処置 | |
継続的改善 | |
記録の管理 | |
評価及び監査 | |
マネジメントレビュー |
技術的要求事項 | 要員 |
施設及び環境条件 | |
検査室の機材、試薬及び消耗品 | |
検査前プロセス | |
検査プロセス | |
検査結果の品質の確保 | |
検査後プロセス | |
結果の報告 | |
結果の報告(リリース) | |
検査室情報マネジメント |
ISO 15189を用いた認定に関する情報は、以下に示した日本適合性認定協会(JAB)ホームページからご覧いただけます。