消費者白書説明会に参加して

9月9日(土)、広島市消費生活センター研修室において「平成29年度版『消費者白書(以下白書)』説明会」が、消費者庁消費者調査課長の澤井景子氏を講師に招き開催されました。参加者は28名でした。

まず澤井氏より消費者調査課の業務について説明、そして白書の中身についての解説がありました。

白書は消費者基本法および消費者安全法に基づく法定白書です。主に消費者政策、消費者事故の情報分析と結果報告をベースとして特集テーマとともに構成されています。

特に特集テーマについて、ここ数年は高齢者に視点をあててきたが成年年齢の引き下げや消費離れを考え、今年は若者にスポットを当てた、と新たな挑戦を明かされました。

そして2016年度における消費者問題の動向としては相談件数が88.7万件であったこと、世代別では若者の相談は減り高齢者の相談が増加していること、商品サービス別では通信サービスの相談が26万件と突出しているが支払い平均金額は2.7万円と低額だったことなどが紹介されました。また2016年度に急増した「お試し」サプリメントや化粧品の申し込みが定期購入だったというトラブルは、8割が女性で、うち2割が10歳代20歳代だったそうです。

また高齢者が巻き込まれるトラブルは詐欺的被害が依然高水準で、「仮想通貨」「レンタルオーナー」の投資勧誘が目立ちました。

意外だったのは、「トラブルに遭ったときに頼れる相手は?」という質問に女性の場合高齢層になると「子」と答える割合が増えますが、70歳以上の男性は「配偶者」が57.2%で「誰にも頼らない」も30%を超え、特に高齢男性の見守りが重要との分析でした。

次に特集テーマ「若者の消費」については、現代の若者の特徴として低成長デフレ下で情報化の進展とともに育ち、それが消費性向にも影響しているといいます。

平均消費性向は全年齢で低下傾向ですが、20歳代30歳代前半で顕著で、例えば男性の「車関係費」に対する支出、「酒類」「洋服」は男女ともに減少傾向など若者が金額ベースで消費に慎重で、賢く堅実な考え方をしている様子がうかがえます。

一方でコミュニケーションツールとしてのスマートフォン保有率は高く、20歳から30歳代で98%に達しています。

そしてSNSを使い身の回りの出来事を情報発信している割合は10歳20歳代の女性で4割に上り、SNS投稿のための消費行動「コト消費」が特徴といえそうです。ひたすらSNSのやり取りに追われ、したがって消費者トラブルもSNSをきっかけとしたマルチ取引や健康食品、脱毛エステなどの取引が多く見られるようです。

このような若者世代への消費者教育には各自治体も「お笑い」を活用し若者参画の取り組みを行い、若者自身が興味を持ち理解を深めることが出来るよう工夫されている様子が紹介されていました。

その他消費者事故の報告や企業の消費者志向経営、衣類の「洗濯表示」の変更や「消費者裁判手続特例法」の推進など300ページ以上にも及ぶ白書の内容は消費者庁のHPからも見ることが出来ます。ボリュームがありますが、世の中の出来事を数字が裏付けているもの、反対に世間一般の印象と数字が異なる事実もあり興味深く、一読をお勧めします。

この後消費生活相談員資格取得説明会があり、木場環さんによる体験談発表がありました。さらにこの日来広されていたNACS永沢総務委員長のお話など盛りだくさんの内容で、盛況のうちに終了しました。

(広島 天野 真由美)