研修会報告 賃貸借トラブルと解決のポイント

9月2日(土)、広島市消費生活センター研修室において、『賃貸借トラブルと解決のポイント』というテーマで研修会が行われました。講師である大村真司弁護士のスピード感あるお話に、16名の参加者は真剣にメモを取りながらの1時間30分でした。 大村先生は、日弁連消費者問題対策委員会副会長を務められる等、多忙な中、2017年に宅地建物取引士としても登録されています。

研修の前半は、相談業務に役立つ宅建業法の解説となりました。『宅建業法とは』にはじまり手付金、所有権留保に関する制限など、足早に説明をしていただきました。不動産業者のほとんどは、ハトマークあるいはウサギマークの保証協会の会員であり、取引しようとする業者が会員かどうかを確認すると良い、おとり広告は、広告した時点で違反であり、宅建業法と景表法によって罰則があるが、なかなか見つけにくいのが現実であるというお話しもありました。

後半は『敷金ガイドライン』の解釈と事前質問の解説がなされました。敷金返還請求権の時効は5年、転勤大家の場合は10年。原状回復は、民法により賃借人に義務があり、通常損耗については、義務の範囲外。しかし、任意規定であるので、強行規定に反しないものであれば特約も有効。しかし、消契法10条違反とならないかの検討が必要。もし、通常損耗補修特約が無効となれば、『原状回復にかかるガイドライン』が通常損耗か否かを判断する重要な指針となる。賃借人が通常損耗として負担する内訳に加え、金額明示が必要であるという判例評釈があり、通常損耗補修特約は簡単には認められない。敷引特約を例に挙げながら、特約の考え方として、①暴利的ではない、②賃借人が負担の具体的な内容・金額までも契約書に記載されるなど認識する、③明確に合意されているか、という点からの検討が必要ということでした。他に、大村先生が担当された立退料の案件など興味深いお話しも伺うことが出来ました。

最後に、田中支部長より、平成28年度広島県消費生活相談状況について、『不動産賃借』の相談は『インターネット関連』の相談に次いで2位であるなどの報告がありました。

私は、いくつもの賃貸住宅を経験しています。今まで、業者から退去時に請求される可能性のある補修箇所、金額、特約の説明を受けた記憶がありません。まして、法人契約となると、居住者本人が契約書を見ることもなく生活しています。過去に、「入居の際、気になった不具合やキズなどを写真に撮っておいて」や「入居から2週間以内に、汚れ、キズ不具合箇所を記入し報告して」と言う業者もいました。日頃から、住居の扱いに、気を使っていますが、この様な事を言われると、借り手として、より一層の注意を払い生活します。借り手が、借りているという意識を強く持ち、トラブル回避に効果的に取り組む良い例だと思います。研修後、業者(家主)が借り手とトラブルにならないよう、業者から借り手へのアクションが広がると良いと、改めて、思いました。

(広島 伊賀 佐容)