nacs 公益社団法人 日本消費生活アドバイザーコンサルタント・相談員協会

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相談事例09

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アパートを退去したところ、敷金を超える高額な原状回復費用を請求された

相談事例09

20代 男性

相談概要

1ヶ月近く前に賃貸アパートを退去した。敷金は家賃1か月分の83,000円を支払っている。不動産業者からクロスの全張替え代42,500円とハウスクリーニング代33,840円、床補修代5,000円、税込89,474円を請求されている。

床は自分が傷つけたので負担するが、壁紙全部の張替えとハウスクリーニング代は納得がいかない。不動産業者は、壁側のベッドの跡で変色したので張替えだと言う。

国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を見て、契約書にハウスクリーニング代を請求するとは書いていないこと、きれいに清掃して退去していること、壁の変色は通常の使用範囲なので原状回復費用を減額して欲しいと内容変更郵便を送ったが、業者は故意・過失による変色だと主張する。どうすればよいか。

アドバイス

  • アパートの敷金は法的な意味づけはありませんが、本来の意味は、家賃の滞納や、部屋を汚損・破損した時に備えて賃借人から預かる費用のことです。
  • 本来、通常の使用の範囲であれば、次の賃貸人のために畳を変えたりクロスを張り替えたりする費用は、賃貸人(大家)が負担するものですが、それらの費用を現賃借人に負担させるケースが多くあり、国土交通省が1998年にガイドラインを公表し、2011年までに何度か改訂されています。
  • この事例のように、内容証明郵便を送付しても、返金がされないケースは、最終的に敷金返還訴訟や、民事調停などで返還を求めることも視野に入れるとよいでしょう。

一口メモ

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の考え方(国土交通省)

垣外ラインでは、賃借人の原状回復義務の考え方や負担対象範囲について基準を定めています。

(1)原状回復とは

「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。

原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化

(2)「通常の使用」とは

「通常の使用」の一般的定義は困難であるため、具体的な事例を次のように区分して、賃貸人と賃借人の負担の考え方を明確にしました。

出所:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の考え方(国土交通省)

なお、襖紙や障子紙、畳表といったものは、消耗品としての性格が強く、減価償却資産の考え方を取り入れることにはなじまないことから、経過年数を考慮せず、張替え等の費用について毀損等を発生させた賃借人の負担とするのが妥当であると考えられます。

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